私たちが目指しているのは「農作物としてのワイン」です。それは自然に任せきりで生まれるものではありません。人が自然と向き合い、天候や土の変化を感じ取りながら試行錯誤を重ね、先人が残してくれた、もしくはこの時代だからこそ可能となった知恵と技術を活かし、自らの手を動かし汗をかきながら育て上げていく。そうして生まれるワインのあり方こそが、私たちの考える農業です。
ワインの世界では、土地の特色が農作物に与える独自の風味を「テロワール」と呼びます。一般には気候や土壌といった自然環境がもたらす影響のことを指しますが、人が自然と向き合いながら積み重ねてきた創意工夫もまた、テロワールだと私たちは考えています。土地に根を下ろし、苗を植え、畑をつくり、収穫し、醸造する。そのプロセスにマニュアルはなく、すべてが試行錯誤の連続。だからこそ、そこには作り手の意思や哲学が表れます。ワインは、自然環境によるテロワールを映し出すと同時に、人が関わることによるテロワールもはっきりと映し出します。
近江八幡は、琵琶湖の水の恵みによって豊かな水田風景が広がる、日本有数の米どころです。一方で、ブドウを含む果樹については、栽培適地として語られてきた土地ではありません。しかし果樹が育つための気候的条件は十分であり、工夫と手間を重ねることで栽培が可能であることを、私たちは10年におよぶ食用ブドウ栽培で証明してきました。そして2025年、私たちは長年の夢だったワインづくりをこの地で始めました。これまでの知識と経験に加え、新たな農業資材やIoT、ICT、AIなども積極的に取り入れながら、農作物としてのワイン、そして近江八幡ならではのテロワールを探求し、多くのみなさまにお届けしたいと考えています。